無痛性甲状腺炎|わかば甲状腺クリニック|坂戸市関間の内分泌内科・内科

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無痛性甲状腺炎

無痛性甲状腺炎|わかば甲状腺クリニック|坂戸市関間の内分泌内科・内科

無痛性甲状腺炎とは?

のどに両手を当てる女性

「最近、動悸がするし汗をかきやすくなった」「急に疲れやすくなった気がする」
こうした症状を感じてインターネットで検索し、「無痛性甲状腺炎」という病名にたどり着いた方もいらっしゃるかもしれません。
甲状腺の病気は、症状が更年期障害や自律神経失調症と似ているため、ご自身で判断するのが非常に難しい疾患です。特に無痛性甲状腺炎は、治療が必要な「バセドウ病」と症状が酷似しているものの、治療方針が真逆になることもあるため、正確な診断が何よりも重要となります。
この記事では、無痛性甲状腺炎の原因や特徴的な症状の経過、バセドウ病との違い、そして日常生活での注意点について、専門的な視点からわかりやすく解説します。

無痛性甲状腺炎とはどのような病気?

無痛性甲状腺炎は、その名の通り「甲状腺に痛みを伴わない炎症」が起きる病気です。

通常、甲状腺の中に蓄えられている「甲状腺ホルモン」が、炎症によって甲状腺の組織が壊れることで血液中に漏れ出し、一時的にホルモン値が高くなる状態(甲状腺中毒症)を引き起こします。

慢性甲状腺炎(橋本病)との関係

この病気は、橋本病(慢性甲状腺炎)をお持ちの方に発症しやすいことがわかっています。橋本病の経過中に、突発的にこの無痛性甲状腺炎を起こすケースが多く見られます。また、出産後数ヶ月以内に発症することも多く、その場合は「出産後甲状腺炎」とも呼ばれます。

無痛性甲状腺炎の症状と「3つの経過」

無痛性甲状腺炎の最大の特徴は、時期によって甲状腺ホルモンの量が変動し、それに伴って症状が変化することです。一般的に、以下の3つの期間を経て自然に治癒に向かいます。

1

破壊性甲状腺中毒症期(1〜3ヶ月程度)

甲状腺の細胞が壊れ、貯蔵されていたホルモンが一度に血液中に漏れ出す時期です。血液中の甲状腺ホルモン濃度が高くなり、代謝が活発になりすぎます。

  • 主な症状:動悸、頻脈、手の震え、多汗(暑がり)、体重減少、イライラ、不眠
  • 特徴:甲状腺の腫れが見られることがありますが、痛みはありません。

2

甲状腺機能低下症期(2〜4ヶ月程度)

漏れ出したホルモンが枯渇し、壊れた甲状腺の修復が追いつかない時期です。今度は逆にホルモン不足の状態(甲状腺機能低下症)に陥ります。

  • 主な症状:全身の強い倦怠感(だるさ)、寒がり、むくみ、体重増加、便秘、皮膚の乾燥、眠気
  • 注意点:以前よりうつっぽくなったり、やる気が出なくなったりすることもあります。

3

回復期

甲状腺の機能が元に戻る時期です。ただし、「中毒症期(高値)→低下症期(低値)→正常」と大きく数値が変動するため、体への負担は小さくありません。完全に正常化するまで、専門医によるモニタリングが不可欠です。

多くの場合は自然に正常化しますが、一部の患者様ではそのまま永続的な甲状腺機能低下症(橋本病の状態)に移行することもあります。

「バセドウ病」との決定的な違い

「動悸がする」「痩せる」という症状は、「バセドウ病」と同じです。しかし、この2つの病気は原因も治療法も全く異なります。

特徴 無痛性甲状腺炎 バセドウ病
原因 甲状腺が壊れてホルモンが漏れ出る 甲状腺を刺激してホルモンを作りすぎる
治療薬 抗甲状腺薬は使わない 抗甲状腺薬が必要
期間 一過性(数ヶ月で自然治癒) 長期の治療が必要

ここが重要です

もし、無痛性甲状腺炎なのに「バセドウ病」と誤診され、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(抗甲状腺薬)を飲んでしまうと、後の「機能低下症期」に急激な機能低下を招き、症状が悪化してしまうリスクがあります。

そのため、専門機関での正確な鑑別診断(血液検査や超音波検査、場合によっては放射性ヨウ素摂取率検査など)が必須となります。

無痛性甲状腺炎の原因と発症しやすいタイミング

なぜ突然、炎症が起きるのでしょうか。完全な原因は解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。

1.自己免疫の異常

もっとも多いのが、基礎疾患として「橋本病」を持っているケースです。普段は症状がなくても、潜在的に橋本病の素因を持っている方が発症することもあります。

2.出産(出産後甲状腺炎)

妊娠中は免疫寛容といって免疫反応が抑えられていますが、出産後に免疫機能が急激に戻る際、リバウンドのように甲状腺への攻撃が起こることがあります。産後3〜6ヶ月頃に「動悸がする」「痩せてきた」と感じる場合、育児疲れではなくこの病気の可能性があります。

3.特定の薬剤や季節の変わり目

インターフェロンなどの特定の薬剤の使用や、季節の変わり目、強いストレスなどが誘引になることもあります。また、花粉症の季節に発症が増えるという報告もあります。

検査と診断の流れ

当院をはじめとする専門クリニックでは、以下のような検査を行い、他の病気と慎重に見分けます。

血液検査

  • 甲状腺ホルモン:現在のホルモン値を確認します。
  • 甲状腺刺激ホルモン:脳からの指令ホルモンの値を確認します。中毒症期には著しく低下します。
  • 甲状腺関連抗体:バセドウ病との鑑別に用います。

超音波(エコー)検査

甲状腺の大きさ、腫れ方、血流など甲状腺の内部の状態を画像で確認します。

バセドウ病では血流が非常に豊富(火焔状)になりますが、無痛性甲状腺炎では血流が低下、あるいは増えないのが特徴です。この「血流の見極め」が誤診を防ぐ最大のポイントとなります

治療方法と日常生活での注意点

基本的な治療方針

無痛性甲状腺炎は「自然に治る病気」であるため、原則として特別な治療は行わず、経過観察となります。ホルモンを抑える薬(抗甲状腺薬)は使用しません。

ただし、症状がつらい場合には「対症療法」を行います。

  • 動悸がひどい時:心拍数を抑える薬を短期間使用します。
  • 機能低下が強い時:一時的に甲状腺ホルモン薬を補充することがあります。

日常生活で気をつけること

  1. 激しい運動は避ける
    ホルモン値が高い時期(中毒症期)は心臓に負担がかかっています。動悸があるうちは、激しいスポーツや長時間の入浴は控え、安静を心がけましょう。
  2. ヨウ素の摂取について
    通常の食事制限は特に必要ありませんが、過剰な昆布エキスの摂取や、ヨウ素を含むうがい薬の頻用は避けたほうが無難です。
  3. 定期的な通院
    症状が治まったからといって自己判断で通院をやめないでください。「今はどの時期にいるのか」を血液検査で確認しながら、完全に回復するまで見届けることが大切です。

亜急性甲状腺炎との違いは?

名前が似ている病気に「亜急性甲状腺炎」があります。こちらも甲状腺が壊れる病気ですが、最大の違いは「痛み」と「発熱」です。

  • 無痛性甲状腺炎:痛くない。熱は出ない。
  • 亜急性甲状腺炎:甲状腺が非常に痛い。38度以上の熱が出ることがある。

首の痛みを伴う場合は、亜急性甲状腺炎の可能性が高いため、痛み止めやステロイドによる治療が必要になります。

自己判断せずに、専門医による正確な診断を

無痛性甲状腺炎は、数ヶ月で自然に良くなることが多い病気ですが、その期間中は動悸や極度のだるさにより、日常生活や仕事に支障をきたすことも少なくありません。

何より怖いのは、「ただの疲れだろう」と放置したり、似ている病気である「バセドウ病」と誤った判断をしてしまったりすることです。

  • 急に暑がりになったり、汗をかいたりする
  • 安静にしていても心臓がドキドキする
  • 産後、急激に体重が減った後にひどくだるくなった
  • 健康診断で甲状腺の数値を指摘された

このような症状にお心当たりのある方は、決してご自身だけで悩まず、専門の医療機関を受診してください。

私たちのクリニックへご相談ください

当院では、甲状腺疾患の専門的な診療を行っております。

血液検査の結果や最新の超音波検査機器を用い、「無痛性甲状腺炎なのか、バセドウ病なのか、それとも他の病気なのか」を迅速かつ正確に診断いたします。

患者様一人ひとりの「今の病期」に合わせた、適切な生活指導やお薬の調整を行い、不安なく回復期を過ごせるようサポートさせていただきます。

「なんとなく首元に違和感がある」といった些細なことでも構いません。まずは一度、お気軽に来院ください。

受診を迷っている方、あるいは診断を受けたばかりの方へ

今はホルモンの嵐が吹き荒れている時期ですが、必ず凪(なぎ)の時期が来ます。お薬でホルモンを抑える必要はありませんが、動悸などのつらい症状を和らげることは可能です。我慢しすぎず、主治医に今のつらさを伝えてください。