ご家族が甲状腺の病気の方へ
ご家族が甲状腺の病気の方へ

「母親がバセドウ病だったから、自分もそうなるかもしれない」「姉が橋本病と診断された。自分も検査を受けたほうがいいの?」
ご家族、特に血の繋がったお母様やお姉様、妹様などが甲状腺の病気(バセドウ病や橋本病など)にかかると、ご自身への遺伝を心配される方は非常に多くいらっしゃいます。
結論から申し上げますと、甲状腺の病気そのものが直接遺伝するわけではありませんが、「病気になりやすい体質」は遺伝する傾向にあります。
この記事では、甲状腺疾患と遺伝の関係性、発症の引き金となる要因、そしてご家族だからこそ知っておきたい「早期発見のためのチェックリスト」について、専門的な視点から解説します。
医学的に言うと、バセドウ病や橋本病といった自己免疫疾患は、親から子へ100%遺伝する病気(メンデル遺伝病など)とは異なります。
しかし、「甲状腺が自己免疫の攻撃を受けやすい体質(遺伝的素因)」は、親から子へ受け継がれることがあります。
統計的なデータを見ると、バセドウ病や橋本病の患者様の約15〜20%程度に、甲状腺の病気を持つ血縁者がいると言われています。逆に言えば、「家族に患者がいるからといって、必ずしも自分も発症するわけではない」ということも、安心材料として知っておいてください。
病気が発症するには、受け継いだ「遺伝因子(体質)」という土壌に、後天的な「環境要因」が種をまくように重なることが必要です。
これらが複雑に絡み合った時に発症するため、生活習慣を整えることで、発症を遅らせたり、早期発見につなげたりすることが可能です。
甲状腺の病気にはいくつか種類がありますが、特に家族内での発症に注意が必要なものをご紹介します。
これらは「自己免疫疾患」と呼ばれ、最も家族内発症が多いタイプです。お母様が橋本病であっても、お子様がバセドウ病になる(あるいはその逆)というように、病名が異なって発症するケースもよく見られます。これは「自己免疫の異常」という根本的な体質が共通しているためです。
一般的な甲状腺がん(乳頭がんなど)は、明確な遺伝性は低いとされていますが、家族内に複数人の発症者がいる場合(家族性非髄様甲状腺がん)は、発症リスクがやや高まると考えられています。
ただし、「甲状腺髄様(ずいよう)がん」という非常に稀なタイプに関しては、遺伝子変異(RET遺伝子)によって強く遺伝することが分かっています。遺伝性髄様がんは全体の約25%程度で、この診断がついたご家族がいる場合は、必ず専門医による遺伝カウンセリングが必要です。
女性ホルモンが自己免疫系に影響を与えるため、甲状腺疾患は圧倒的に女性に多い病気です。男性に比べて女性はバセドウ病で約3〜5倍、橋本病では約10〜20倍もなりやすいと言われています。
もし、あなたのお母様、姉妹、祖母に甲状腺の病気がある場合、あなたは一般の方よりも発症リスクが高い「ハイリスクグループ」に入ると考えられます。特に以下のタイミングはホルモンバランスが変動し、病気のスイッチが入りやすいため注意が必要です。
「体質は受け継いでいるかもしれない」という前提で、以下の症状がないかをご自身の体と向き合ってみてください。少しでも当てはまる数が多い場合、潜伏していた体質が表面化している可能性があります。
もし、ご家族に甲状腺疾患の方がいて、ご自身がこれから妊娠・出産を希望されている場合、症状がなくても一度検査を受けておくことをおすすめします。
甲状腺ホルモンは、お腹の赤ちゃんの健やかな成長に欠かせないものです。自覚症状がない段階の「潜在性甲状腺機能低下症」であっても、不妊や流産のリスクに関わることがあります。
妊娠前に自分の甲状腺の状態を知っておくことは、未来の赤ちゃんを迎えるための大切な準備の一つです。
完全に発症を防ぐことは難しいですが、リスクを下げるために日常生活で意識できることがあります。
ご家族が甲状腺の病気であることは、決してネガティブなことだけではありません。なぜなら、あなたは「自分には甲状腺のリスクがあるかもしれない」と事前に知ることができているからです。
甲状腺の病気は、早期に発見し適切な治療を受ければ、健康な人と変わらない生活を送ることができます。一番怖いのは、不調の原因が甲状腺だと気づかずに、長い間辛い症状を我慢してしまうことです。
こうしたタイミングで、「そういえば母も甲状腺が悪かったな」と思い出してください。
当院では、患者様ご本人はもちろん、そのご家族様の「検診」も積極的に受け付けております。
血液検査でホルモン値や抗体の有無を調べるほか、超音波(エコー)検査で甲状腺の腫れやしこりの有無を直接確認することで、より確実な診断が可能です。もし異常が見つからなければ、それが一番の安心に繋がります。
「念のために調べておきたい」。その動機だけで十分です。ご家族の健康を守るためにも、ぜひ一度お気軽に当院へご相談下さい。